デデは走りました。手の中がキンと冷たく、カッカッと熱かったけれど、
逃げられないように重ねた両手を硬く握って走りました。
いつもの丘の上。いつものみつあみを揺らしながら、
いつものようにニニはデデを待っていました。
「デデ!おはよう」
丘を危なっかしい足取りで駆け登ってくるデデに、ニニは笑顔で声をかけました。
「おはようニニ。今日はプレゼントがあるんだよ」
ようやくニニの元までたどり着いたデデは、嬉しさのあまりほっぺたをりんごのように真っ赤にしながら言いました。
ニニは小さく首を傾け、プレゼント?と聞き返します。デデは、顔中を輝かせて笑うニニを思い出しながら、
握っていた手を、ニニとおでこがくっつくほど顔を寄せながら、そっと手を開きました。
ところが、デデの小さな手のひらは、赤く色づいているだけで、そこには何もありませんでした。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「デデ?」
デデの顔を覗き込むと、その瞳には透明な泪が溢れ、今にもこぼれ落ちそうでした。
ニニは慌てて両手をデデの頬に当てて、指でそっと泪を拭いました。
デデの泪は熱を持っていて、ニニの指先をそっと温めました。
デデは、その間、ずっと口をへの字に曲げ、熱い喉元が冷めるのを待ち続けていました。
ようやく、デデは自分の頬に触れているニニの手を取り、ひどく悲しそうにつぶやきました。
「ごめんねニニ。とっておきのプレゼントだったのに、逃げられないようにしっかり握ってたのに、消えちゃったんだ」
両手でニニの手をぎゅっと握りながら、デデは一番見たかったニニの笑顔を想ってうつむきました。
心配そうに様子を伺っていたニニは、ふわりと微笑みました。
「いいのよデデ。いつだって、デデのくれるプレゼントはとっておきだもの」
ニニの優しい顔を見て、デデはふうっと強張っていた体の力を抜きました。
その時です。
二人の視界の端に、白い光がチカリと光りました。
「デデ!」
先に顔を上げたニニが、息をすうっと吸い込んだ後に、デデの名前を呼びました。
つられて顔を上げたデデは、キンと冷えた空気が体の中に入ってくるのが分かりました。
鉛色の空から溶け出したように、白いものがひらひらと宙を舞っていました。
あっと小さく呟いて、デデは片手を繋いだままのニニを見ました。
ニニは頬を林檎のように真っ赤にして、瞳がきらきらと輝いています。
ニニが、デデを見て、輝くような満面の笑顔で言いました。
「ありがとうデデ。素敵なプレゼントだわ」
それは、デデが一番大好きな、ニニの最高の笑顔でした。
デデはにっこり微笑んで、一緒に空を見上げました。
明日は一面の銀世界を冒険できそうです。