ニコの手作り『桜』パンケーキ






春の陽気をたっぷり含んだ緑の絨毯のうえに、ぽつぽつと顔を出すたんぽぽやおおいぬのふぐり。
白と茶のミケ猫が昼寝をしているのを、大股で飛び越えて、見上げた先には優しく光る碧空と、ひらひら、ちらちら、揺れる淡いピンクの花の咲く、おおきな、おおきな、さくらの木。
まっしろなおろしたてのエプロンの、端と端を小さくつまんで、おおきな、おおきな、さくらの木を一回り。
甘い香りのする風が吹くと、はなびらがうれしそうに、身を任せて舞い降りてくる。そのはなびらを、エプロンの上に集めながら、ニコは満足そうに笑みを浮かべます。
さくらの花が、満開になった頃、毎日のようにさくらの花びらを集めるのがニコの日課でした。

ちいさな町にある、クリーム色の壁に、赤い屋根の、ちいさな家に帰ったニコは、キッチンへ入って準備を始めます。
クリーム色の壁にかけられた中身のない額縁や、ドライフラワー。手作りのバスケットの中には、赤と白のコットン生地を布団にして眠っている、お気に入りのくまのぬいぐるみのマーシャ。
大きく開け放した窓辺には、カーテンの代わりに、綺麗なリボンやレースを飾って。綺麗な青色のガラス瓶に入った野花がゆらゆら揺れています。

 エプロンに集めたさくらの花びらをていねいに運んで、小さな空色と、蒲公英色のタイルで飾られたテーブルの上へ。
一枚一枚きれいに並べたら、そのままお日様の光にさらして、ニコは遅めの昼食作り。
白いエプロンは桜のベットに使われているので、壁から下がっている胸のところと、右膝の上あたりに、赤い花の刺繍のついたエプロンをきゅっと結びます。
白いホーローのボウルに、さらさら粉とふくらし粉、ビッケ(ニコが飼っているにわとり)が産んだ玉子を入れて。
ふたつどなりのマージおじさんからもらった絞りたてミルクを注ぎます。
木べらでかき混ぜたら、シロップ漬けにしたチェリーをぽんぽん入れて、さっくり混ぜ合わせます。
お揃いで揃えたホーロー鍋を火にかけて、暖まったら、ボールを傾けてタネを流し入れます。
 甘い香りがしてきたら、ひっくり返す前に一工夫。砂糖漬けにした桜の花びらを、一枚一枚丁寧に並べます。
生地の表面が乾いてきたら、エプロンとお揃いの赤い刺繍の入った鍋つかみを両手にはめて、いち、にの、さんっでひっくり返す。
それから10秒数えたら、お皿に並べて、

『桜パンケーキ』の出来上がり。





北欧風というか、イギリス風というか、田舎の、のどかな風景が好きです。
大好きなものをキッチンに集めたら、一日中居ても飽きないんだろうなぁ。
パンケーキの作り方は適当なので、あしからず。

ゆこ


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